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萩市結婚相談所が戸籍要求

萩市結婚相談所が戸籍要求

萩市役所 通産省の「通達」違反 本籍、住所、既住歴などを明記  参照資料 解放新聞山口県版 6月号外

事件の概要

萩市が今年5月9日から庁舎内に開設した結婚相談所が、00年通産省(現・経済産業省)通達に反し「独身証明書」でなく、戸籍謄本の提出を求めていた。
申込書も95年通産省の「基本的人権を侵害することのないよう万全の配慮を」という「行動指針」に反して、「本籍」「宗教」「既往歴」「身体上の障害」「家族構成・職業・続柄」「離婚理由(死別・生別)」まで記入させていた。また、宇部市社会福祉協議会(社協)の結婚相談事業でも申込書・相談カードに、健康状態(既往歴)、離婚理由(死別・生別)、身体上の障害、前住所と転居理由まで書かせていたことも明らかになった。
97年に厚生省と全国社会福祉協議会(全社協)が改善指導した項目にもかかわらず、宇部市社協は現在まで使用していた。部落解放同盟山口県連合会と地元支部がこれらの差別性・問題点を指摘し、萩市と宇部市社協に対して改善を求めた。
今回、萩市の結婚相談所の問題では、戸籍謄本の提出、差別的「申込書」「紹介カード」記載など、結婚差別に直結し、差別を助長する可能性が高いものである。宇部市社協に対しても、97年に全社協から改善指導を受けたのに、なぜこのような違反項目で実施してきたのか。人権確立に向けて率先して取り組むべき公的機関が、なぜこうした問題を起こしたのか、その原因と背景を明らかにさせる必要がある。また、なぜ職員やマスコミもこの問題性に気づかなかったのか。
今後、県連として真相糾明にとりくみ、萩市や宇部市、山口県に対して広範な糾弾闘争を展開していく。

「独身証明書」の背景、厳しい結婚差別の現実

「独身証明書」発行の背景には、戸籍謄抄本による身元調査、結婚差別の実態から、部落解放同盟が、結婚差別の解消を目指し、国との交渉、関係行政機関に対する取り組みを重ねてきた結果「独身証明書」の発行にいたった。通産省が00年5月10日「結婚情報サービス・結婚相談業者」に対して、基本的人権を侵害することのないよう、入会申込者が独身であることを証明するものとして「戸籍謄抄本」ではなく「独身証明書」を一般行政証明書として活用することを求めるとともに、都道府県を通じて市区町村にも協力を要請している。03年通産省が全国の結婚相談業者を対象に実施した調査では、全国で結婚相談所は推定3100ヵ所。入会時の提出物としては、写真84%、履歴書51%、戸籍謄本抄本33%、住民票23%という状況。04年大阪府・大阪市の結婚相談所の実態調査では「結婚がまとまらなかった要因」において、相手が同和地区出身であったからが9%、相手の家柄が8%、相手の家族に障害者がいるからが7%、相手の国籍・民族が5%、という結果が明らかになった。結婚相談業務における市民の根強い結婚差別の実態を表している。

社協の結婚相談事業問題 この間の国の動き

95 年に京都府内の社会福祉協議会の結婚相談所で、本籍記載・戸籍謄本提出など今回の萩市の問題と同様の事件があいついで起きた。この糾弾闘争のなかで通産省が95年に結婚相談所の申込書や情報収集についての「行動指針」を出すなど、全国的な取り組みが始まった。97年2月21日、全国社会福祉協議会(全社協)が社会福祉協議会の結婚相談事業についての内部調査を実施した。この結果を受けて、97年3月28日に全社協と厚生省が、各都道府県、市町村社会福祉協議会に対して、結婚相談カードでは本籍や宗教、障害の有無など、差別につながる情報収集はしてはいけないという内容の指導通達を出した。また「結婚相談カード記入事項参考例」として、基本的な6項目(①氏名②生年月日③現住所④本人の職業⑤趣味⑥自己PR)を提示している。この改善指導の確認のために、98年1月20日に、全社協事務局長が市町村社協の結婚相談カード等の改善状況の報告を求めている。同時に厚生省からも各都道府県の社協主管課長、地域改善対策主管課長宛に「改善状況を確実に把握」し「十分に指導されたい」とされている。調査票の主な項目は下記の通り。1、本籍欄2、宗教欄3、家族の職業欄4、記入したくない項目は未記入でも可5、第3者への情報提供の事前了解。

身体上の障害、離婚理由、既住歴、転居理由 宇部市社協も違反  全社協の指導改善にもかかわらず

萩市結婚相談所は宇部市社協を参考

萩市との第1回確認会(5月19日)のなかで、萩市は宇部市社会福祉協議会の結婚相談事業を参考にしていたということが明らかになった。すぐに宇部市社協の結婚相談事業を調査すると、宇部市社協の「申込書」「結婚相談申込カード」は、97年厚生省通達(「6項目」基本)、98年全社協改善指導を受けていたにもかかわらず、「現住所(居住年数)、前住所(転居理由)」「住居(自家・借家・借間・住込)」「最終学歴」「身体上の障害」「健康状態(既往症)」「結婚歴(初婚・再婚)」「離婚理由(死別・生別)」「容姿(身長・体重)」「収入」「同居家族・別居家族の性別・続柄・参考事項」などの項目がどうどうと掲載され、使用されている現実が明らかになった。今後県連としては、①県・宇部市の結婚相談所における指導改善(97、98年)の実態を明らかにし、②なぜ宇部市社協がこの書類の問題性に気づかなかったのか、③いつからこの書類が使用されているのか、その提出した被害者の数の把握などの実態把握、④利用した市民がなぜ問題性に気づけなかったのか、等々明らかにしていく必要がある。

新たに見てきた課題

1.マスコミに対して

毎日新聞、山口新聞、中国新聞、西日本新聞などが、萩市結婚相談所の開設を取り上げている。その時に、だれも戸籍提出、結婚相談カードの差別的内容の問題性に気づかなかったのか。また中国新聞は「戸籍謄本提出」などと、そのまま掲載してたことの影響など、今後、議論しなければいけない。

2.厚生労働省に対して

厚生労働省に対して、97年、98年の全社協での改善の指導不足を追求。10年経過しているので、もう一度実態把握と、差別情報収集の禁止の明確化を求める通達・指導を徹底させるように取り組む必要がある。

3.経済産業省に対して

経済産業省に対して、現在作成中の「結婚相手紹介サービス業認証制度に関するガイドライン」(夏頃に発表予定)に、具体的に本籍地や差別につながるおそれのある情報収集を禁止する項目の例示を求める必要がある。

4.全社協に対して

全社協に対して、97年通達、98年の指導改善後の現在の実態把握・指導不足の責任を追及する必要がある。現在、県連が独自に調査しただけでも、かなりの数、戸籍提出をさせている市役所・社協の結婚相談所がある。①市役所の結婚相談所で戸籍謄本提出川越市役所(埼玉)、千葉市役所(千葉)、船橋市役所(千葉)、②社協の結婚相談業で戸籍謄本提出静岡市社協(静岡)、富士市社協(静岡)、我孫子市社協(千葉)、瀬戸市社協(愛知)、盛岡市社協(岩手)、水戸市社協(茨城)ひたちなか市社協(茨城)、③社協の結婚相談の申込書で本籍等の記載高崎市社協(群馬)は本籍、離婚理由など。

5.マイノリティとの連携した取り組み

今回の結婚相談所の問題は、部落出身者だけでなく、障がい者、在日外国人、女性差別、セクシャルマイノリティー、ハンセン病回復者・関係者、アイヌ民族、1人親家庭、婚外子、児童擁護施設で育った人など、多くのマイノリティにも関わる問題である。他の人権運動団体と、ともに取り組むことで、マイノリティの結婚差別問題の解決を目指すことが重要。

なぜ問題なのか?その差別性

なぜ結婚は別なのか

これまで幾多の就職差別や結婚差別でどれだけの若い命が奪われ続けてきたことか。死に至らなくても、多くの自殺未遂があり、さらに心に傷を負った例は山口県内でも枚挙にいとまながない。部落差別撤廃に向けて様々な書類への本籍地の記載をやめさせてきた。就職差別が横行するなかで、社用紙を使わせず、統一応募用紙を制定し、本籍のみならず、本人の労働意欲や適正などと関係のない家族の学歴や職業、宗教、支持政党、資産などの記入をやめさせてきた。しかし「両性の合意のみに基づいて成立」(憲法24条)するはずの結婚にさいしては、公正な採用のために否定されたものと同じものが、なんの躊躇もなく、公然と要求されいている。逆に、統一応募用紙の主旨も、どれだけ理解されているか、差し量れるというもの。与えられた用紙を、空欄がないように埋めるのが当然とする意識は、埋められないのは何かやましいことでもあるのではないかという考えに直結している。自分のプライバシーを明らかにするか否かは、本人が決定すべきことであり、他人が口出しすることではない。今回の萩市や宇部市社協の結婚相談事業には、このような人権の視点や結婚差別の現実認識はまったくといっていいほどない。

差別を生む相談カード

「釣書」という「しきたり」にみられるように、「家」と「家」との「釣り合い」をとることが地域社会で波風をたてずに生きていくこであり、そのため、本籍を書かせ「身元」を調べることが当然視されてきた。それが「仲人的感覚」の正体。地域の秩序は、このようにして保たれてきた。この秩序のもとで部落差別は温存されてきた。本籍、転居理由、宗教、身体上の障害、既往歴、家族全員の職業や生年まで書かせるこの「紹介カード」は、単なるプライバシーの問題ではなく、部落差別、民族差別など大きく人権を侵害するものである。しかし、そのことの認識は担当者や職員などにはなかったからこそ、平気で本籍や転居理由や、家族の職業などを記載させていた。部落民にとって、本籍地を書かされることは、部落民であることを記入せよ、というのに等しいこと。部落産業に従事するものであれば家族全員の職業を書かされることは部落民であることを記入せよと強いられることにほかならない。もっともと、結婚相談にあたって、在日の人が存在することすら、考えたたこともなかった。指摘してはじめて、在日外国人の厳しい結婚差別の現実、民族差別の現実を知った。意識にものぼらないとうことは、それだけ地域社会で排除の対象になっているということ。家族全員の氏名を書かせるのは、ひとり親家庭の場合、一目瞭となり、相手に会う前に書類の段階で不利な状況につきおとされる。本来は公的機関が結婚相談をおこなう意味は、このようなマイノリティの人たちのためにこそ、役立つ結婚相談所であるべきではないか。紹介する段階で、相手の家柄や部落を気にする人がいたら、その場でしっかりと啓発する必要がある。結婚段階になり親族の反対にあっても、一緒に結婚差別と闘い、二人を支援する相談員であるべきでないだろうか。営利目的の民間とは違う公的機関だからこそやるべきことを考える必要がある。結婚差別撤廃の一躍を担う相談所に変わることこそが今、求められている 。