ネット上の部落差別について国会質問
5月13日、衆議院総務委員会でインターネット上の部落差別についての質問がおこなわれた。同和地区の所在地情報の暴露行為が削除されないプロバイダの責任が追及された。法務省は「同和地区の識別情報の摘示」は人権侵害であり、削除対象との認識を示し、プロバイダに削除要請をしているが削除されていない。総務省は通信事業者の自主規制を支援するとの答弁に終始。今後、「部落差別解消推進法」改正の必要性が明らかになった。
◆特定サイトに集中
5月13日の衆議院総務委員会で松田功(立憲民主党)委員が、インターネット上での「同和地区の識別情報(所在地等)の摘示(暴露)」ついての質問をおこなった。松田委員は、昨年6月に報告された法務省の「ネット上の部落差別」の実態調査結果において、「同和地区の識別情報の摘示」は3つのサイト(鳥取ループ・示現舎等)に集中しており、全体の5割を占めることを指摘。逆に3つのサイトの削除について国の姿勢を問うた。法務省は特定のサイトに集中している傾向があることを認め、「いまだに根強い部落差別が存在しているものだと認識している」と回答。
◆削除されず
法務省としては「同和地区の識別情報の摘示」は「それ自体が人権侵害のおそれが高い、すなわち違法性のあるものである」(2018年12月27日法務省依命通知)として、この間、プロバイダ等に削除要請をおこなってきたが「必ずしも削除が進んでいない現状がある」との課題が語れらた。
その上で、事業者に対して「速やかに削除されるべきものであると」として「粘り強く働きかける」と回答。 法務省、総務省と通信事業者との意見交換の場である「実務者検討会」においても「同和地区の識別情報の摘示」事案が議題にあがったことがあると答えた。
◆プロバイダの課題
松田委員からは、2018年法務省「依命通知」以後も、グーグル(ユーチューブ)、ツイッター、フェイスブック、ヤフー、LINEなどの大手事業者や業界団体が「同和地区の識別情報の摘示」が「違法有害情報」として削除していない実態があることを指摘し、通信事業者に「識別情報の摘示」情報を削除させることを求めた。
これに対して法務省は「同和地区の識別情報の摘示」は違法性が高く「違法・有害情報」に該当するとして、人権侵犯事件としてプロバイダへの削除要請に取り組むとの認識をあらためて明確にした。
一方、総務省は、「事業者団体や個別の事業者による自主的な取組」(自主規制)の支援で行うという答弁にとどまった。現状では、プロバイダは訴訟リスクを恐れ、裁判所からの削除命令や業界団体等の明確なガイドライン、判例等がない限り削除されにくい。
法務省の依命通知やプロバイダの契約モデルの禁止規定でも、鳥取ループ・示現舎の「部落探訪」やネット版「部落地名総鑑」が削除されない立法事実が明らかとなった。
今後、業界団体の「契約約款モデル条項」禁止規定の徹底や、「同和地区の識別情報の摘示」禁止のガイドラインの策定に取り組むとともに、「部落差別解消推進法」に、差別禁止規定を盛り込んだ法改正に取り組んでいく必要がある。
同時に9月27日の「全国部落調査」復刻版裁判での一審判決の完全勝利、確定判決を勝ち取り、判例をもとに削除させていく取り組みにつなげていく必要がある。