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【主張】「部落差別解消法」の意義と今後の課題

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1,部落差別解消法の意義

2016年12月9日「部落差別の解消の推進に関する法律」(以下、解消法)が成立し、同年12月16日に公布・施行された。同法の成立に向けて多くの人たちの尽力で成立することが出来た。だし、本当の闘いはこれからだ。「これでいい年を超せる」とのんきなことを言ってる場合ではない。

今回の法案は付帯決議も含めて、解放同盟の糾弾を否定する要素など、どちらにも使えるように、ある意味曖昧なところがたくさんある。だからこそ、これから、私たちが「この法律をどう具体化させるのか」を真剣に考えて、早急に提案していかなければいけない。

①「部落差別は存在する」という認識を、国があらためて明確に示した

2002年「特措法」後の14年間、同和行政・同和教育が後退するなかで、部落差別が「ある」「ない」の議論に決着をつけた。行政や学校では部落差別は「ある」という前提にたち、その解消に向けて取り組むことが責務とされた。今後は、共産党の「社会問題としての部落問題は基本的に解決した」という主張は明らかに法律の主旨に反する主張であることが明確になった。

②「寝た子を起こすな」論を、あらためて、明確に否定したこと。

「学校などで教えなければ、差別はなくなる」「ことさら部落問題を取り上げた授業や研修をしなければ、差別はなくなる」といった「寝た子を起こすな」「同和教育否定論」は、誤りであることが明確に示された。

参議院の法務委員会でも共産党が同和教育・部落問題学習の実施を否定する発言を繰り返した。しかし、法案提出者は「ネット社会で無知が新たな差別や偏見を生んでいる。だから、正しく部落問題について学ぶ必要がある」と、ネット社会における現在、「寝た子を起こすな」論では部落差別は解消しないという姿勢を明確に示した。

この二点が、今回の法案審議の中で明らかにされた、大変重要な点であった。 つまり、共産党の「部落問題は基本的に解決した」という主張は、明確に否定されたということ。「解消法」は恒久法であるため、これら共産党の主張は、今後は法律上「誤り」であり、部落差別の現実を直視し、その解消に取り組まなければならない。

2,今後の課題

①「絵に描いた餅」ではダメ

今後の私たちの課題として、この法律を具体化するための議論と方針をまとめ、提言・実施させていく取り組みを行わなければならない。1965年に内閣「同和対策審議会答申」が出され、その具体化をもとめ福岡から東京までの全国大行進を実施した。各地での具体化を求める議論と提言によって、ようやく1969年に同和対策事業特別特措法ができた。

今回も同じように私達自身が具体化を求めた取り組みをしなければ、解消法は「絵に書いた餅」である。同対審答申が出された当時、「毒まんじゅう論」があったように、その危険性と限界を認めた上で、それでも「目の前にある差別の現実」を少しでも変えていくために、地域で具体化を求めた広範な運動を展開してきた。そうして、劣悪な生活実態や子どもたち長欠不就学、低学力の克服、同和教育の実施などで多くの成果を上げてきた。

②具体化に向けた議論をしっかりと 

今回の解消法にも、多くの限界と矛盾、付帯決議にあるようにある意味、解放運動や同和教育を封じ込める危険性があるのも事実。だからこそ、これらを、具体的にどう進めていくのかが問われている。国もまだ、具体的な方針は描けていない。各省庁が今回の解消法を受けて、部落差別解消に具体的にどう取り組んでいくのかが問われている。同時に県や市町の地方自治体が、今回の解消法を受けて、具体的にどう取り組んでいくのかが重要になってくる。

③3つの基本施策の基本方針を早急に 

解消法では具体的な取り組みとして以下の3点が上げられている。

①「相談体制の充実」(第4条)
②「部落差別を解消するための教育・啓発」(第5条)
③「部落差別の実態調査」(第6条)

例えば
①「同和教育」は文科省、「社会啓発」は法務省、
②「相談窓口の充実」は法務省、ネット上の差別書込の削除依頼は法務省、プロバイダーの削除規約・契約約款のガイドライン作成等の要請は総務省、
③実態調査の実施は、厚労省と法務省など、
各省庁に具体化にむけた議論をおこなっていく必要がある。

12月15日の中央委員会では解放同盟中央本部としても各分野を具体化させるために、どうするのか、関係団体や専門家をいれたプロジェクトチームをつくり、提言をまとめいくことが確認された。

④立法事実であるネット対策も課題

今回の法律の立法事実の大きな一つにネット上での部落差別。ネット上での圧倒的な差別情報の流布と拡散、「全国部落調査」復刻版裁判とネット公開の問題。
今後、それらの被害が予想されるために、ネット上での人権侵害や差別サイトに対する削除対応や被害者救済など、どうするのか。これからのことも、しっかりと、議論しなければいけない。

さっそく、次のステージがスタートしている。「解消法」の具体化に向けて、全力で取り組んでいこう。