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公正採用選考の確立に向けて ー山口労働局と協議ー

部落解放同盟山口県連は、2月16日、山口労働局と就職差別撤廃・公正採用選考の確立に向けた協議をおこなった。
「就職差別につながる恐れのある」健康診断の実施、大学の受験報告書の作成、違反企業への指導、市町と連携した企業啓発の充実などについて協議した。

県内約半数の自治体で健康診断の実施

昨年、県内の半数の自治体で職員採用試験時に、就職差別につながる恐れのある不必要な「健康診断」を実施をしていたことを踏まえ、今後の就職差別撤廃に向けた取り組みについて協議した。

行政などの職員採用選考時における「健康診断の実施」について山口労働局は、解放同盟からの提起を受けてから、労働局が各市町に指導をおこなった。その結果、次年度から、宇部市(消防)以外、すべての市町で「健康診断」が廃止されることになった。

農協や社会福祉協議会についても労働局が指導に入り、就業規則を変更するなど、不必要な健康診断を実施していた事業所は全て改善された。企業の違反事例については、今後、次年度の求人説明会(6月)等で、健康診断の実施については、重点的に説明すると回答した。


違反企業への指導の徹底

「就職差別につながる恐れのある」違反質問等の現状については、労働局としては、県教委からの報告を受けたもので把握している状況。

教委から、毎年20~30件の違反事例の報告があがっているが、違反をした企業に対して、高校からの依頼がないと指導していないことが明らかになった。

このような労働局の対応に対し、県連からは「違反報告があがっても、それを放置していたら、報告した意味がない」と指摘し、「違反質問等の報告を確認した時点で、労働局が責任を持って指導する必要がある。その際、高校側と充分に連携をして受験生への不利益がないように配慮すること」を求めた。


大学の受験報告書の改善

また、これまで県内の大学から違反質問等の報告はなく、企業への指導もおこなっていない現状が明らかになった。その背景には、県内の大学では、受験報告書が違反質問を把握する書式になっていないことや、学生が直接企業にエントリーするため、学生自身が違反事例であると見抜けないので、違反が発覚しにくい現状が語られた。

県連からは、違反の実態があるのに大学から労働局に報告があがってきていない現状を指摘し、大学の公正採用選考システムの充実、受験報告書の改善などを労働局から依頼するように要請した。


企業啓発の課題 市町との連携を

現在、100人以上の事業者や派遣事業者を中心に、県内で945事業所で「公正採用選考人権啓発推進委員」が設置されている。
推進員への啓発は、毎年6月に求人業者への説明会を実施し、その際に1時間程度公正採用選考や人権についての研修を実施している。しかし、推進員の参加率が低いという課題がある。

県連からは、市町の人権担当課と連携し、企業人権啓発組織を活用するなど、市町が実施する人権研修への参加を働きかけるなど、企業啓発に取り組むことなどを提案した。

今後、山口労働局は、大学生・卒業生の就職難の課題解決に向けて、大学生を地元のハローワークに登録させる取り組みを強化する。そうなれば、労働局の方で企業への提出書類を直接チェックでき、違反の把握と指導がしやすくなる。今後も引き続き、就職差別撤廃への取り組みを充実させていく決意が語られた。

※解放新聞山口版(2012年3月号)より