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宇部市中学校生徒差別発言事件

宇部市中学校生徒差別発言事件(2005年2月)

「こんなエタの食うようなもの食べれるか」宇部市の学校で生徒が差別発言

昨年(05年)2月中旬から下旬にかけて、宇部市内の中学校で、生徒が賤称語、地名をあげて差別発言をし、ホームページへの書き込みをおこなった事件があった。県連として、今回の差別事件を教訓化し、「部抜き、差抜き」の人権教育にならないように取り組んでいく。

事件の概要

中学3年生のAが、給食時に「こんなエタが食うようなもの食べれるか」と発言。その場にいたBは家に帰り、部落の所在を家族に教えてもらい、Aに教える。
Aは音楽の授業中、クラスメートに、部落の地名を言いふらした。Aたちが話しているそばで、部落出身のCがその会話を聞いていた。しかも、Cの保護者はまだ子どもに立場を教えていないという状況であった。
Bは学校からの指導を、自分が開設しているホームページにその経過を書き込み、公開していた。今回の事件に対して、真の意味で反省していないことがわかった。
事件発覚後、学校や市教委も対応したが、Cが部落出身という立場を自覚していないということや、受験前だという「配慮」もあり、本人たちなどへの対応が遅れた。
しっかりとした事件の解決を見ないまま、その後、A、B、Cは中学校を卒業した。しかも、BとCは、同じ高校に入学し、毎朝同じバスで通学している、

対応の問題点

当初、学校や市教委は、本人たちのプライバシー等を理由に、事件そのものを隠していた。
地元の運動団体からの指摘もあり、年度が明けた4月に、市教委が市内の校長、教頭、人権教育担当者を集めて、事件の概要を説明し、今後の人権教育のあり方について研修を開いた。
しかし「事象や経緯についての質問は遠慮してほしい」という前提で、具体的な差別事件の内容に触れることがない説明で終わった。
今回の事件で、いったい何が問題で、今後の部落問題学習にどう活かすかということを、掘り下げることができない内容の研修だったと参加した教員からの声もあった。
「差別の現実に深く学ぶ」という同和教育の基本姿勢がなく、差別が「ある」のに、当事者のプライバシー等を理由に「ない」ことにしようとする姿勢の問題が浮き彫りになった。

差別事件の背景

①「こんなエタの食うようなもの」と発言した、Aの誤った部落史認識についてである。

1988年の県教委による「差別紙芝居事件」に代表されるように、江戸時代の部落は「貧しいもの、惨めなもの」とされた認識が前提にある。「差別紙芝居事件」から20年近くが経とうとしている現在においても、この教訓が学校現場に充分に活かされていない現実が浮き彫りになった。現在の部落史研究の水準などをまったく反映されていない学習の結果である。
今後の部落問題学習のあり方を検討していかなければいけない。

②Bの家族が、校区内にある部落の所在を子どもに教えているという点について。

このことは、地域の保護者に対するこれまでの同和教育の取り組みや関わり、啓発の取り組みの弱さがあげられる。
また、Bの家族に元教員もいたということ。同和教育をおこなっている者が、ホンネの部分では「他人事」になっており、自分の身内すら理解してもらっていないという課題が明らかになった。
今後、地域の保護者に対する啓発、教職員の人権研修のあり方や、管理職に対する人権教育の指導の充実が問われている。

③Aが音楽室で、部落の所在を言いふらしているときに、その発言を聞いた生徒たちの中で、Aに対して「おかしい」と指摘したり、その後、先生に相談することがなかった点である。

部落の子どもたちが通う中学校で、部落の所在を興味半分で知り、そのような会話をしている現実が、当事者にとってどれだけの心理的苦痛を与えているのか、そのような会話に同調して聞いていること自体が、差別を助長していることに気づけていない。「おかしい」と思っても、反差別の具体的行動に移さなければ、学習の意味がない。

部落問題に対しての正しい「認識」から「行動」できる主体者の育成という視点で、今後の同和教育のあり方を根底から見直して行かなければならない。