県同教総会 差別の現実に深く学ぶ ~部落問題をどう教えていくか~
山口県人権・同和教育研究協議会の総会が5月26日(土)、宇部市隣保館厚南会館でおこなわれた。
総会に先立ち学習会がおこなわれ、松本卓也・県同教事務局長から「チーム6年生、なかま」と題した、実践報告がおこなわれた。
松本先生からは、昨年担任した6学年全体の課題として、一人ひとりが安心できる居場所づくりを求めて、友達の思いを共有・共感できる仲間づくりの一年間の取り組みが報告された。
報告では、運動会、修学旅行、共同版画など、クラスの枠を超えて6年全体で取り組む活動に、人権教育の土壌である「なかまづくり」を実践。「なかまづくり」は、単なる「なかよしグループ」ではなく、学級や学校で疎外されている子や、くらしに課題がある子を中心に据え、一人の「いたみ」や「つらさ」をみんなが共有・共感することのできる集団であることが提起された。
学習会の後、総会がおこなわれた。主催者あいさつで、山口県同教の高林公男委員長は、中学校の社会教科書に部落史の記述が増えてきたことに触れ、「まずは部落問題について教科でしっかり教えていくことが大事。私たちが部落史の記述をどう捉え、教えていくのかを考えていきたい」と述べた。
続いて、松本卓也・事務局長より、事業報告、活動方針案が提起され、すべて承認された。
研究課題の「同和教育をめぐる状況」では、熊本県人教が2011年3月に実施した「中学卒業生進路状況調査」によると、部落出身生徒の高校進学率が、この20年間で最も低い数値になっていたことが報告された。
このような状況は、山口県においても同様の傾向があり、山口県同教としては、教育・運動・行政のそれぞれの立場で、子どもたちの現実を深く見据えた、新たな課題を確認する必要性が提起された。
また、県内の人権教育が「部落問題抜き・差別問題抜き」で、同和教育・人権教育とはいえない内容が多い現状がある。差別の克服を「思いやり」や「心がけ」の問題として、日々の生活や教育の場などに表れる、具体的な差別の現実と向き合う姿勢を問うことを避ける人権教育の課題が提起された。
質疑では、小学校の教科書で「識字」について掲載されているが、教える先生自身が識字教室や「識字」というもの自体を知らないという現状があり、県同教として、具体的な指導案や実践資料などを紹介していく必要性が語られた。
解放新聞山口版 第70号(2012年6月号)より