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主張 「人権尊重の視点に立った」施策、教育・啓発活動の推進とは?

水曜日, 6 月 27th, 2012

2002年3月末に特別措置法が失効し10年が経つ。この間、県内の自治体でも同和行政から人権行政、人権教育として進められてきた。

山口県人権推進指針では「今後は、同和問題は人権に関わる課題の一つとして捉え」「基本的人権を尊重するという視点にたった教育・啓発活動を推進します」とし、県内の市町も同様にやってきた。

しかし、「同和問題は人権課題の一つ」と言いながら、実際には学校教育でも同和問題だけが取り上げられていない現状が明らかになった。市民啓発でも、多くの市町で同和問題をテーマにした人権研修はゼロという状況が明らかになっている。

特別措置法がなくなったということは、同和問題解決の手法が「特別対策」という手法から「一般対策」に変わっただけである。「差別がある限り、同和行政は積極的に推進されなければいけない」(65年内閣「同対審」答申)を再確認する必要がある。

同和行政とは、同和問題解決のための行政施策である。「法」の失効は、事業法にもとづく「同和対策事業」が終わっただけで、同和行政が終わった訳ではない。

県がいう「人権尊重の視点に立った施策の推進」とは、同和問題解決の仕組みが、すべての人権課題の解決につながる仕組みになるように取り組むということである。

結婚差別・就職差別の身元調査において戸籍が利用され、苦しめられてきた部落解放運動だからこそ、戸籍制度にこだわり、本人通知制度導入の取り組みを展開してきた。

この制度が導入されたことで、部落外の人たちの個人情報保護、自己情報コントール権の確立にとって大きな役割を果たしている。これが、同和問題を解決する取り組みが、すべて人の人権を尊重する取り組みにつながる一例である。

「人権尊重の視点に立つ」ということは、同和問題を取り上げず、人権一般の抽象的な啓発活動をすることではない。差別は具体的である。その差別によって、どのような人権が侵害されたのか。奪われた人間の尊厳をどう回復するのか。今後、再発防止に向けてどう取り組むのか。それぞれの具体的な差別の現実を通して、人権確立を考えていくことが求められている。

学校の人権教育、市民啓発も同じだ。「これまでの同和教育の成果と手法を十分に評価し」と言いながら、実際には、同和問題だけ扱わず、具体的な差別の現実、子どもたちの生活の現実と向き合うことなく、抽象的な人権一般の学習、「おもいやり」「やさしさ」という徳目主義的な道徳教育に向かっている傾向がある。

同和教育の成果と手法である「差別の現実から深く学ぶ」姿勢や、個人の自己責任ではなく社会問題として捉える視点などが欠落している。人権行政、人権教育になり10年。改めて「人権尊重の視点に立った」施策、人権教育・啓発の内実を問う必要がある。

解放新聞山口版第70号(2012年6月号)「主張」より

県同教総会 差別の現実に深く学ぶ ~部落問題をどう教えていくか~

水曜日, 6 月 27th, 2012

山口県人権・同和教育研究協議会の総会が5月26日(土)、宇部市隣保館厚南会館でおこなわれた。
総会に先立ち学習会がおこなわれ、松本卓也・県同教事務局長から「チーム6年生、なかま」と題した、実践報告がおこなわれた。
松本先生からは、昨年担任した6学年全体の課題として、一人ひとりが安心できる居場所づくりを求めて、友達の思いを共有・共感できる仲間づくりの一年間の取り組みが報告された。

報告では、運動会、修学旅行、共同版画など、クラスの枠を超えて6年全体で取り組む活動に、人権教育の土壌である「なかまづくり」を実践。「なかまづくり」は、単なる「なかよしグループ」ではなく、学級や学校で疎外されている子や、くらしに課題がある子を中心に据え、一人の「いたみ」や「つらさ」をみんなが共有・共感することのできる集団であることが提起された。

学習会の後、総会がおこなわれた。主催者あいさつで、山口県同教の高林公男委員長は、中学校の社会教科書に部落史の記述が増えてきたことに触れ、「まずは部落問題について教科でしっかり教えていくことが大事。私たちが部落史の記述をどう捉え、教えていくのかを考えていきたい」と述べた。
続いて、松本卓也・事務局長より、事業報告、活動方針案が提起され、すべて承認された。
研究課題の「同和教育をめぐる状況」では、熊本県人教が2011年3月に実施した「中学卒業生進路状況調査」によると、部落出身生徒の高校進学率が、この20年間で最も低い数値になっていたことが報告された。

このような状況は、山口県においても同様の傾向があり、山口県同教としては、教育・運動・行政のそれぞれの立場で、子どもたちの現実を深く見据えた、新たな課題を確認する必要性が提起された。

また、県内の人権教育が「部落問題抜き・差別問題抜き」で、同和教育・人権教育とはいえない内容が多い現状がある。差別の克服を「思いやり」や「心がけ」の問題として、日々の生活や教育の場などに表れる、具体的な差別の現実と向き合う姿勢を問うことを避ける人権教育の課題が提起された。

質疑では、小学校の教科書で「識字」について掲載されているが、教える先生自身が識字教室や「識字」というもの自体を知らないという現状があり、県同教として、具体的な指導案や実践資料などを紹介していく必要性が語られた。

解放新聞山口版 第70号(2012年6月号)より