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職員採用試験で「健康診断」を実施~就職差別につながる恐れ 不必要な健康診断の実施は再検討

土曜日, 12 月 31st, 2011

~解放新聞山口版 2011年12月(第65号より)~ 

 山口県内の自治体で、職員採用時において
「就職差別につながる恐れのある」健康診断(健康診断書の提出など)を
実施していることが明らかになった。

採用選考において、血液検査などの健康診断の実施は
「就職差別につながる恐れがある」として、
厚生労働省は客観的・合理的な必要性がある場合を除いて実施しないように指導している。

しかし、県内のいくつかの自治体では一般職の試験でも、
客観的・合理的な目的や基準もないまま、健康診断(提出)を実施している。
採用選考時において、不必要な健康診断の実施は、就職差別につながる恐れがあり、
実施の必要性ついてに再検討するべきである。

今後、県内の自治体での採用選考の実態把握につとめ、
その必要性や実施にあたり、就職差別につながる恐れのないように、
公正採用選考の確立に取り組んで行く。

■必要な場合でも、客観的理由を明示、検査項目を限定、応募者の同意の上

「採用選考時」における血液検査などの健康診断の実施は「就職差別につながる恐れのある項目」として厚生労働省が何度も通達を出し、山口県・県教委も毎年、事業主に対して通達を出している。

健康診断を実施する場合でも、
①職務遂行上の能力の有無の判断に関わる範囲に限定し、
②検査目的・内容・科学的根拠を明確にし、
③事前に応募者に充分説明し、相互の了解の下で、結果判定には産業医の意見も取り入れるなど、就職差別につながらないように注意をはらい、実施することとされている。

■県内市町の状況

山口県連が確認したところ、一般職での職員採用選考時において
健康診断を実施(健康診断書の提出)しているのは、
下関市、長門市、美祢市、平生町の4市町である。

専門職での実施は、萩市(病院・消防)、光市(水道・消防)、
柳井市(消防)、下松市(消防)、宇部市(消防)の5市である。

消防などの専門職においては、
山口市、周南市、岩国市、防府市、山陽小野田市などでは、
採用選考時に体力検査は実施しているが、健康診断は実施していない。

採用担当課に「健康診断書」提出の理由を聞くと、
ほとんどの自治体は「明確な理由」はなく、
以前からの慣行として健康診断書の提出を求めていた。

ある市は「ウイルス感染やC型肝炎などがないか調べるため」と回答、
別の市は「職務が遂行できる健康状態にあるかどうかを調べるため」と回答。

しかし、その場合、健康診断書の結果で「合否に影響したケース」
「不合格になる基準があるのか」と聞いたが、
不合格になった事例や明確な検査項目・採否の基準はなかった。

また、受験生の健康診断書を、本人へ返却・破棄せず、
不合格者のセンシティブ情報である健康診断書を保管している自治体も多かった。

■「採用時」≠「雇い入れ時」健康診断

厚生労働省は、労働安全衛生規則第43条にある「雇い入れ時の健康診断」は
あくまで採用後の適正配置・健康管理のために実施するものであり
「応募者の採否を決定するために実施するものではない」としている。
「健康診断の必要性を慎重に検討することなく、採用選考時に健康診断を実施することは、
応募者の適正と能力を判断する上で必要のない事項を把握する可能性があり、
結果として、就職差別につながる恐れがある」(1993年労働省職業安定局)との通達を出している。

また、応募者の適正と能力を判断する上で
合理的かつ客観的に必要性がある場合を除いて実施しないようにとしている。

■血液検査はウイルス感染者等 差別や偏見を助長する恐れ

健康診断によって事業主が得る受験者の健康に関する情報はセンシティブ情報にあたる。
不合格者は雇用されない事業所に病気やプライバシーに関わるセンシティブ情報を
預けたままになる。個人情報の漏洩や流出などの場合には、管理者の責任が問われる。

近年の裁判では「応募者の同意を得ず」におこなったHIV抗体検査やB型肝炎ウイルス検査が
不法行為であるとの判断を受けている。
したがって、ウイルス感染の有無について確認するのであれば、
応募者からの同意を得てからおこなう必要がある。

また、厚労省は採用選考時において「血液検査」等の健康診断を実施することは、
結果としてB型・C型肝炎などのウイルスの持続感染者に対する
就職差別につながる恐れがあると指摘している。

■マイナスモデルとしての機能

本来、就職差別撤廃・公正採用選考の確立に向けて
取り組まなければいけない自治体が、
職員採用時において健康診断を実施している。

このことは、地元の企業所や行政関係団体などの採用選考モデルとして
マイナスの効果を果たしている。

現に、該当市町の社会福祉協議会や農協、地元の有力企業などでも同様に、
採用選考時に健康診断を実施しているケースが多い。

これまで、労働局や当該自治体を受験した高校や大学などから、
健康診断の実施についての疑問や指摘はなかったのだろうか。
県立高校において実施している受験報告書は機能していたのだろうか。

今後、県内の自治体、民間企業をはじめ各種団体などの採用選考の実態把握をおこない、
就職差別撤廃・公正採用選考の確立に向けた取り組みを展開して行く。

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  ※「血液検査」に関して(厚労省の見解)

ウイルス性肝炎は、通常の業務において労働者が感染したり、
感染者が他の労働者に感染させたりすることは考えられず、
また多くの場合肝機能が正常である状態が続くことから、
基本的に就業にあたっての問題はない。

肝炎ウイルスの持続感染者等に対する差別は、偏見を基礎にしたものであるといえる。
したがって、採用選考時において肝炎ウイルス検査(血液検査)を含む
合理的必要性のない「健康診断」を実施することは、
結果として肝炎ウイルス感染者等に対する就職差別につながる恐れがある。
(参考:2001年厚労省通達「採用選考時の健康診断に関わる留意事項」)

※「色覚検査」に関して(厚労省の見解)
色覚検査において「異常」と判断された人の大半は支障なく
業務をおこなうことが可能であることが明らかになってきている。

労働安全衛生規則の改正(2001年)により、
「雇入時の健康診断」の項目として色覚検査は廃止された。
従って、労働者を「雇い入れる」際には、
「色覚異常は不可」などの求人条件をつけるのではなく、
色を使う仕事の内容を詳細に記述するとともに、
採用選考時の色覚検査を含む健康診断については、
職務内容との関連でその必要性を慎重に検討し、
就職差別につながらないように呼びかけている。

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東京・司法書士による 戸籍謄本等不正取得事件

月曜日, 12 月 26th, 2011

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愛知県警捜査員などの戸籍謄本等を不正取得したとして11月11日、東京都内の司法書士、元弁護士、探偵会社・代表らの5人が逮捕された。報道によれば、逮捕された5人は「職務上請求書」を2万枚偽造し、全国各地の自治体から1万件以上もの不正取得を行っていた。

山口県内でも佐藤隆・司法書士の名義で偽造された職務上請求書が、すでに下関市や山口市など9市で55枚が確認され、戸籍や住民票が合計78件交付されている。今後、山口県連としても事件の真相究明に取り組むとともに、次年度中に県内全市町での「本人告知」「本人通知」制度の導入に向けて全力で取り組んで行く。

■県内でも9市で79件

解放同盟山口県連が県内全市町へ開示請求をおこなった結果、佐藤隆・司法書士名義の「職務上請求書」が、下関市16枚(24件)、山口市10枚11件)、防府市7枚(12件)、岩国市7枚(12件)、萩市6枚(6件)、周南市4枚(5件)、光市3枚(6件)、長門市1枚(2件)、県内9市55枚確認され、戸籍・住民票は合計78件交付されたいたことが明らかになった。

被害が明らかになった自治体は、被害者への本人告知をおこなう必要がある。しかし、被害者への本人告知制度を導入しているのは現在、宇部市、岩国市、周南市の3市である。今後、早急に被害者への本人告知制度を導入し、市として被害の状況把握、今後の対応などを検討していく必要がある。

■2万枚の偽造請求書 組織的ルートが確立

各地の探偵事務所などに寄せられた戸籍の入手依頼は、ガルエージェンシー東名横浜(探偵社)代表・粟野貞和が集約し、プライム総合法務事務所(奈須、佐藤・司法書士)に持ち込み、偽造した2万枚の職務上請求書を使い、全国の自治体から戸籍謄本等を不正取得していたと報道されている。

ガルエージェンシー東名横浜の粟野代表は、2007年三重県の行政書士による戸籍等不正取得事件で、行政書士に戸籍の入手依頼をしていたプライベートリサーチ社(横浜市)の代表であった。

前回の事件でガル社・粟野代表は「斡旋者は別にいる」「調査の半数は結婚相手の身元調査」と証言していた。当時、山口県内でも、宇部市7件、岩国市2件、柳井市1件で被害を受け、県内の10件すべてが結婚相手の身元調査のために利用されていた。

■次年度通に県内15市町が「本人通知」制度の導入を決定

今回の事件でも明らかなように、有資格者などによる戸籍謄本等の不正取得は後を絶たない。職務上請求書では、窓口で不正かどうかは判断できない。また、自分の戸籍や住民票が第3者によって不正に取得されても、本人は気づくことすらできない。だから「本人通知」制度が必要なのである。

この間、解放同盟山口県連は、県内全19市町に対して登録型「本人通知」制度導入の要請行動を展開してきた。その結果、すでに山陽小野田市、宇部市において登録型本人通知制度が導入されている。

2012年度以降に山口市、萩市、長門市、美祢市、防府市、周南市、柳井市、光市、岩国市、下松市、周防大島町、田布施町、平生町、上関町、和木町などの15市町で導入が予定されている。

今後、実施時期を明確にしていない2市町に対して、今回の事件を踏まえ、再度、不正取得防止に向けて登録型「本人通知制度」導入の要請行動をおこない、次年度中に県内全市町での実施を目指す。