山口県人権・同和教育研究集会を岩国で開催
第27回山口県人権・同和教育研究集会が8月8日(月)、岩国市民会館において開催され、県同教会員・教育関係者、企業、行政、運動団体など150名が参加。「差別の現実から深く学び、生活を高め、未来を保障する教育を確立しよう」をテーマに、人権・同和教育の実践交流、熱心な討論と学習を深めた。
山口県同教の高林公男委員長より、主催者を代表してあいさつがおこなわれた。
高林委員長は、「人権教育という名のもとに、部落問題学習がおこなわれていない」現状を強く指摘し、同和教育を基軸とした人権教育の創造を呼びかけた。
続いて、解放同盟山口県連の松岡広昭委員長が来賓あいさつ。松岡委員長は、福島の子どもたちが、県外の避難先の学校でイジメられている現状にふれ、原発事故による「風評」や偏見などを受け入れる教育課題を指摘した。同和教育で学んできたことを、しっかりと活かした人権教育の取り組みの充実を訴えた。
広島県同教の香渡清則事務局長からは、同和教育の原点である吉和中学校事件60年、広島市高校生結婚差別事件20年など、今年は節目の年であり、それぞれの事件の教訓を確認し、もう一度、自分たちの人権・同和教育の取組を点検していく必要性を訴えた。
開会行事のあと、「網の目から落とされる子どもたちの現状」と題して、広島県東部子どもセンター一時保護課長の香渡清則さん(広同教事務局長)より、記念講演がおこなわれた。
香渡さんは、児童相談所の一時保護課に勤務するなかで、問題行動(触法、虞犯)の子ども、虐待・DV・子育て不安・経済的困窮・障害をめぐる問題など、2歳から18歳までの網の目から落とされる子どもたちの現実を語った。
講演で香渡さんは、今、社会全体に人権を保障する機能が壊れていることを指摘した。福祉は底が抜けるほどに、自己責任、自己負担が強要されている。教育現場では、「学力・進路保障」など「保障」という言葉にかわり「支援」という言葉が使われるようになった。 支援によって、手を差し伸べる発想であるために、学校や社会の責任を見えにくくしている。そのため、子どもは学び・労働から逃避、保護者・おとなは子育てに責任を持とうとしなくなっている。
網の目から落とされた子どもたちの大きな問題として「人間関係の欠如」がある。「高校無償化」や「子ども手当」などの経済的な対処療法だけでなく、もっと根本の労働者の家庭生活が安定するような政策が必要である。
最後に、香渡さんは、安心できる家庭環境づくりを含めた居場所の確保、そのためにも「同和教育の総和としての進路保障」を、ボトムアップしない限り、何も変化しないと訴えた。
午後からは学校教育・社会教育の2つの分科会に分かれ、実践報告がおこなわれ、熱心な討議と学習を深めた。