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山口県東部地区部落問題研究会第20回講座 組坂委員長が記念講演

山口県東部地区部落問題研究会第20回講座が、2月21日(月)シンフォニア岩国において開催され、
地元の行政・企業・運動関係者など700人が参加し、今後の人権・部落問題解決にむけて学習を深めた。

山口県東部地区部落問題研究会は、岩国・下松・柳井・上関・周南支部などが中心となり開催し、今年で20回を迎える。
開会行事では主催者を代表して坂田正実行委員長が挨拶を行い、戸籍の不正取得事件やネット上での悪質な差別事件、
人権侵害に対する救済制度の必要性が語られ、「全国水平社の精神を受け継ぎ、人権文化を生活の隅々まで広げようと」と訴えた。

来賓あいさつでは、福田良彦岩国市長より、「同和問題に対する偏見や差別意識を解消するために取り組んでいこうと」と研究会の成功と激励のメッセージが送られた。

全体講演①では山口県人権・同和教育研究協議会の高林公男委員長より
「部落解放史の新しい見方~山口版~」と題して講演がおこなわれた。

高林さんからは、近世・近代を中心に、山口県の部落解放史について、具体的な事例をもとに講演がおこなわれた。
江戸時代の栗山考庵(萩藩医)がおこなった腑分け(人体解剖)で、
実際には、部落民が腑分けをおこなっている様子を史料をもとに紹介し、部落民が医学に貢献してきた一例が紹介された。

そのほか、吉田松陰と部落民との関わりや、
吉田稔麿(松蔭の弟子で、屠勇取立方になり部落民の兵士登用を建策するも、池田屋事変で闘死)と
千秋藤篤(幕末の加賀藩の尊皇論者・儒学者で、部落民を解放し、田畑を与え生活の安定を図れと主張)についてや、
高杉晋作と奇兵隊編成における被差別民などについて部落解放史の視点から説明がおこなわれた。

また、宇部の田村定一(衆議院議員・元社会大衆党宇部支部長)が
憲法十四条の「社会的地位」という文言から「社会的身分」の文言に変えるように、
松本治一郎、福岡の田中松月らとともGHQに対して部落問題で交渉をしてきたことが語れた。

続いて、部落解放同盟中央本部の組坂繁之委員長より
「これからの部落解放運動~人権・平和・環境の21世紀の実現をめざして~」と題して、講演がおこなわれた。

組坂委員長からは、部落解放運動の闘いの成果と課題について、人権侵害救済法、狭山再審闘争、
差別糾弾闘争を中心に語られた。

人権教育・啓発推進法ができて10年が経つ。この法律の第1条は「この法律は社会的身分、門地、人種、信条又は性別による不当な差別の発生等・・・」と書かれている。真っ先に書かれている「社会的身分」というのは、まさに部落問題、同和問題のことである。部落問題解決に向けて積極的に人権教育・啓発推進法を活用する必要性を訴えた。

国内の人権侵害事象は2万件以上、虐待は4万件にものぼる。
現在113ヶ国で人権委員会が設置されているが、アジア地域では中国と日本だけ設置されていない。
先進国の中でも最も遅れている。人権侵害救済法の早期制定に向けて全力で取り組んでいく必要がある。

今日の差別事件としては、土地差別調査事件が大きな問題となっている。
被差別部落や在日コリアンの集住する地域でのマンション建設を敬遠するため、
土地購入の段階からマーケティングリサーチ会社(調査会社)が調査し、広告会社に報告書として提出し、
それを受け取った広告会社は、ディベロッパーに無条件でその報告書を手渡すという構図が長年にわたり漫然と続けられてきた。

今回、発覚した会社には、同和問題に取り組む企業連絡会に加盟し、社内でも長年人権研修もやってきた会社もあった。
糾弾会を通して、人権研修はやってきたものの、自らの意識を変革させるような研修ではなかったことが明らかにもなった。