群馬全青 運動の未来をつくるのは青年 〜宇部市結婚差別事件を報告〜
解放新聞山口版 第53号 2010年9月30日
部落解放第54回全国青年集会が群馬県で開催され、全国から解放運動に取り組む青年たちが参加し、日々の活動や悩みなどを語り合い、学習と交流を深めた。全体会の記念講演では、昨年9月に宇部市で起きた結婚差別事件が報告された。
第54回全青が9月11日( 土) ~12日(日)、群馬県みなかみ町で開催され、全国から28都府県連、304人が参加した。
初日、開会行事では、組坂繁之中央執行委員長より主催者を代表してあいさつ。
「これからの運動の未来をつくるのは青年。次代の人権運動を担うのは青年」「お互いの友情を深め、共に学び、各地で実践していこう」と集会の成功と次代の運動を担う青年への期待が語られた。
特別報告
特別報告では、部落解放・人権研究所の内田龍史さんよ「青年アンケート調査から見る部落青年の現状」が報告された。
記念講演②では、「あと一歩!今度こそ再審開始を!」と題して、石川一雄・早智子さん、狭山闘争本部事務局長の片岡明幸中央執行委員より、講演がおこなわれた。
初日の全体会終了後、レセプションがおこなわれ交流を深めた。
二日目は4つの分科会に別れ、実践報告と討議を深めた。
記念講演①
初日、全体会の記念講演①では「山口県宇部市の開業医による結婚差別」と題して、山口県連の川口泰司書記次長と当事者のIさんが報告した。
はじめに、当事者のIさんが自身の生い立ちを語った。Iさんは宇部市の被差別部落で育ち、高校2年生の時に部落外に引っ越しをした。その理由は、父親自身も結婚差別を受けており、子どもたちにはそんな思いをさせたくないと、部落外に引っ越し、本籍地まで変えた。
Iさんは自分の立場を知ったときには、「そんなの昔の話。今はそんな差別はない」と父親に反発していた。学校では同和教育を受けていた。高校を卒業し、社会人になってからも、部落の友達も何事もなく結婚していたので、部落差別が今もあるという実感がなかった。
昨年7月に、現在のパートナーと出会う。交際段階から身元調査をされ、彼が部落出身であることが暴かれる。親族会議では、「別れない」という彼女に対して、父親が何度も彼女の頭をなぐり、無理矢理、二人は引き裂かれる。さらには、そんな娘に対して、父親は「精神的におかしい」と施設に入れて治療させてようとしていた。その段階で、地元の解放同盟宇部支部に相談が入った。監視状態の彼女は、意を決し、夜中に家を抜け出した。
その後、運動団体や関係者による両親との話し合いが続けられた。その間、彼女は2週間以上も仕事を休んでいた。これ以上、長期化すると職場復帰も難しくなる状態だった。
話し合いでは、最終的に、彼女の両親は「娘の交際には介入しない」ということで、とりあえずは落ち着いた。
二人は今年1月入籍し、7月に子どもを出産した。彼女の両親や親戚に連絡したが、誰も病院には来ず、現在も実家とは行き来が出来ない状態だ。Iさんは、全青には初参加だった。
全体会の記念講演では、緊張しながらも、「自分たちのことを話すことで、少しでも部落問題の解決に役に立てるならば」と、自分の思いを精一杯語った。
講演後、同じような体験をした青年や、全国の仲間から多くの励ましやアドバイスをもらった。