全国「同宗連」 明治維新の地 萩の被差別民 〜全国の各教団から参加〜
解放新聞山口版 第45・46号 2010年2月26日
『同和問題』にとりくむ宗教教団連帯会議が主催する、第57回「同宗連」研修会が1月25日、26日に萩市の萩本陣でおこなわれ、山口同宗連をはじめ全国から各教団の人権担当者など50人が参加し、差別撤廃への学習を深めた。
開講式では、山口同宗連の金澤正善(日本基督教団)副議長があいさつをおこなった。金澤さんは、朝日新聞に部落問題の記事が連載されていることを紹介し、「差別が陰湿な形で現れているからこそ、しっかりとマスコミが部落問題を取り上げていることに大きな意味がある」「今回の研修会で新しい差別撤廃の動きをつくっていこう」と呼びかけた。
続いて、講義1では、山口県人権啓発センター事務局長の川口泰司さんより「山口県の部落問題の現状と課題」と題して講演がおこなわれた。
川口さんからは県内の被差別部落の実態、萩市結婚相談所問題や宇部市結婚差別事件をはじめ、県内のあいつぐ差別事件の現実と課題が報告された。
講義2では、部落解放同盟山口県連名誉顧問の岩田利平さんから「私の歩んできた道」と題した聞き取りがおこなわれた。
萩市内の部落出身で今年で100歳を迎える岩田さんからは、自身の生い立ちをもとに、幼少期、小学校の教員による差別事件、同盟休校の体験、全国水平社大会への参加、大阪で靴職人として生きるなかでの被差別体験などが語られた。
また、厳しい差別のなか、自分たちの身を守るために生まれてきた「隠語」についても説明し、当時の差別の現実と部落の人たちの暮らしや知恵、たくましさが語られた。
講義3では、松陰神社学芸顧問の松田輝夫さんから「吉田松陰の人間観」と題した講演がおこなわれた。吉田松陰研究の第1人者である松田さんからは、松陰と被差別民との関わり、その人間観を中心に報告がおこなわれた。
吉田松陰が25歳の時、下田でアメリカ行きを試みて失敗し、牢獄につながれ、江戸獄へ送られた。その牢屋の番人に、自分の考えを説いて聞かせている。番人の中でも特に被差別部落の人たちと、心を通わせて、最後には部落の番人の人たちが一番、別れを惜しんでくれたことなどが回顧録に書かれている。また、350石もある萩の高須久子がエタ身分と交際をし、当時の身分制度を脅かす重罪だと野山獄に入れた。その野山獄での吉田松陰と高須久子との出会い、松陰の唯一の恋愛についても語られた。
二日目は萩商工高等学校の高林公男さんがコーディネーターで「明治維新の地、萩の被差別民」をテーマに、萩市内のフィールドワークした。
フィールドワークでは江戸時代・他藩に先駆けて実施された女性の腑分けの刑場跡、吉田松陰と高須久子がいた野山獄跡地、萩キリシタン殉教者記念公園、旧岩国屋敷跡などを実際に訪れ、学習を深めた。
そして、最後に全体会では、山口同宗連の山本昌男さんより、「山口「同宗連」の取り組み」と題した実践報告がおこなわれた。