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第36号 根強い偏見 結婚差別の現実 ~県民人権意識調査の結果から~

解放新聞山口版 第36号 2009年4月30日

根強い偏見 結婚差別の現実 ~県民人権意識調査の結果から~

山口県が昨年9月に実施した「人権に関する県民意識調査」の報告書が出された。山口県としては初めての人権意識調査であり、調査結果からは厳しい部落差別の現実も浮き彫りになった。

県内の20歳以上を対象に4000人から無作為抽出し、郵送法で実施した。回収率は58%、有効回収率は57%であった。報告書では大きく3つの視点から分析されている。

  1. 人権全般(指針、人権侵害の有無・対処法等)、
  2. 個別分野ごとの課題(女性、子ども、高齢者、障害者、同和問題、外国人、感染症患者等、ハンセン病問題、プライバシー保護、犯罪被害者など)、
  3. 人権教育・啓発の取組(啓発活動の接触度、条件整備など)。

他の課題と比べ、結婚差別は突出

「偏見が残っている」56%、「結婚問題で周囲が反対」27%、「差別的言動」19%、「えせ同和行為がある」11%、「就職・職場で不利な扱い」4%、「ネット上で悪質な書込み」2%であった。県民の半数以上が同和地区に対して「偏見が残っている」と認識しており、根強い差別意識の現実が浮き彫りとなった。

「結婚問題で周囲が反対すること」に関しては、他の人権課題では障害8%、外国人8%であるが、同和問題だけ27%と突出している。普段の生活では「部落差別はない」「部落の人を差別しない」と言いながら、いざ結婚という直接的な利害が絡むと反対する現実がある。

さらにプライバシー保護の項目で「職場や結婚などの際に、企業や調査機関等から調査されること」は6%である。

個別課題の把握と実態調査の必要性

今回の調査では人権全般を把握する内容で、個別課題の把握が不十分であり、今後の課題である。

また「同和問題の解決に必要なこと」という質問では、「人権教育・啓発広報活動」「自由に意見交換できる環境」「人権相談支援体制を充実」「えせ同和行為を排除」という選択肢で、部落の教育・福祉・生活などの実態的差別の現実をどう解決するのかという視点がまったく入っていない。一般施策を活用し同和問題の解決を進めると言いながら「人権教育・啓発行政」に矮小化されていることも同時に問わなければいけない。

県連としても今後これらの意識調査の結果を丁寧に分析し、差別の現実をどう捉え、運動を展開してくのか議論していく。