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朗読劇「長州藩維新団」物語 ~西光万吉との約束~

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西光万吉との約束

全国水平社の『水平新聞』創刊号(1924年)に「屠勇 維新団」と題した記事がある。全国水平社創立宣言の起草者の1人、西光万吉が書いた檄文。
「兎に角、小生は山口県水平社でこの維新団の詳しいことを調べて欲しいと思っている」
「嗚呼、屠勇、たとえ無意識であったにせよ如何に日頃の鬱憤が晴れたであろう。如何に前途が明るくなったであろう。賤民の集団に名づけられた維新団の名は、遂に明治革命と共に長らく吾々を鼓舞するであろう。」
「水平社の子孫よ!ハッキリと意識して大正水平期を画さねばならぬ。」
と維新団への思いが綴られていた。
今回、山口県水平社創立から90年以上を経て、ようやく、西光万吉との約束を果たすことが出来た。
先達の長い研究成果を踏まえ、「明日を紡ぐ大地の会」の朗読劇によって今、ようやく「維新団」に熱と光が吹き込まれたからだ。

維新団の活躍

現在、山口県では「明治維新150年」に向けた様々な企画が立ち上がっている。「明治維新革命」と言われたこの革命の本質は、封建的身分制度の打破である。

長州藩でそれを最も象徴する出来事が、被差別部落民による「維新団」の活躍である。

彼らの活躍は「賤民廃止令」(明治4年)の発布に大きな影響を与えた。

維新団の結成当初は、長州藩の民や幕府軍からも「穢兵」と呼ばれ蔑まれていた。しかし、維新団の兵士たちは、人間の尊厳と誇りをかけて闘った。封建的身分制度への不合理さを最も感じていたからこそ、倒幕への思いは、他の諸隊よりも強いものがあった。

芸州口の闘いでは、遊撃軍の先鋭部隊として、最前線で幕府軍を追撃し、勝利へ大きく貢献した。

朗読劇では、その闘いの様子や維新団の活躍が鮮明に描かれていた。大村益次郎の指導のもと世界的レベルの戦術書をもとに他の諸隊とともに訓練を受け、岩国から芸州広島の山野にまで潜入し、詳細な戦闘地図をつくることに貢献している様など、まさに遊撃軍の主力部隊として維新団が活躍している。

幕府を震撼させた

その活躍は当時の幕府に大きな衝撃を与えた。
幕府開成所が発行している新聞には「長賊等穢多非人を集め、兵隊を組み立てたるよし、井伊・榊原を破りしは即ちこの穢多隊なり」と、社会の最下層の民兵軍団が、幕府最強の武士軍団を打ち破った衝撃を生々しく伝えた姿が描かれていた。

朗読劇の最後には、全国水平社創立宣言が高らかに読み上げられた。

「兄弟よ、吾々の祖先は自由、平等の渇仰者であり、実行者であった。」
「ケモノの皮剥ぐ報酬として、生々しき人間の皮を剥ぎ取られ、ケモノの心臓を裂く代價として、暖かい人間の心臓を引裂かれ、そこへ下らない嘲笑の唾まで吐きかけられた呪われの世の悪夢のうちにも、なお誇りうる人間の血は涸れずにあった。」
「吾々が穢多であることを誇りうるときが来たのだ」
「人の世に熱あれ、人間に光あれ」

維新団の兵士、水平社宣言、西光万吉の思いが、私たちの胸に突き突き刺さる。
私たちの先達が「自由、平等の渇仰者であり、実行者であった」ことを、朗読劇によって、あらためて実感させられた。

解放同盟山口県連としても、維新団のことをもっと多くの人に知ってもらいたいと思っている。
今後、この朗読劇「長州藩維新団」物語を、学校や地域など、多くの場で公演してもらえることを期待している。

「水平新聞 創刊号」
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「維新団の肩章」(所蔵:岩国徴古館)
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「歩兵操典」(所蔵:岩国徴古館)
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