【新刊案内】長州藩維新団 明治維新の水平軸 布引敏雄
山口の幕末維新と言えば吉田松陰・高杉晋作・久坂玄瑞・吉田稔麿等の人物が挙げられる。しかし彼らが部落大衆とどのように関わったかはあまり語られていない。また部落民衆が幕末維新に積極的に関わったことも多く知られていない。
長年にわたり、山口県の部落解放史を開拓してきた著者。これまで幕末史では、松陰から幕末長州藩被差別部落民諸隊までの研究をしてきた。
本書はこれらの研究を踏まえて「松陰と高須久子(野山獄での同囚)」「吉田稔麿の屠勇取立」「維新団(高森の部落民衆が結成した部落民隊)・一新組の結成」「上関茶筅隊」「幕長戦争での部落民諸隊の働きと評価」などを再考したものである。
著者は本書で、維新団を民衆の要求を実現させようとする横の連帯「水平軸」の原点と位置付け、「維新団研究の基本的な歴史事実を洩らさず書きつけたもの」であると簡潔に目的を記している。
だが巻末には重要史料や年表をも付され、幕末部落解放史全般の基本的事項が十分に網羅され、またそれに関する著者独自の見解も述べられ、読み応えがある。そして本書は研究者のみならず一般読者にも表現方法において十分配慮されているので読みやすい。部落の人々は勿論県民の多くの人びとが読まれ、話題になることを切望します。(忍)